ただあの子になりたくて
中央の列の前から二番目の席の蒼介を視界の端で盗み見れば、目をみはって硬直していた。
そうだ。蒼介はそういうキャラではない。
すると、指名もされていないのに男子の渋い声が上がった。
「それじゃあ普通だ。結局、人魚姫を選ばずに、他の女と結婚した王子だろ? なら、女たらしの清水じゃね?」
その発言に廊下側の席の拓斗に視線が集中する。
女たらしのくだりは別としても、演技も得意そうな拓斗には確かにあっていると思った。
というか、誰かに推薦されるよりも、我先にと名乗りを上げる方が拓斗には似合うくらいだ。
だから私は密かに首を傾げた。
「え……、俺……?」
注目されることは誰より好きなのに、ワンテンポ遅れて、間が抜けたように自身を指さして言う。