ただあの子になりたくて


女子だけの歓声の中、黒板には、真木蒼介の四文字が、王子の下に記された。

言葉を失い力なく座る蒼介。

蒼介も、あの土曜のことを引きずっているのだろうか。

横目に遠い空をぼんやりと見やる。

私のことなど何も気にすることはないのに。

優しさは時として残酷だ。

人生を謳歌できる華やかな人間は、弱い者を憐れんでくれなくていい。

それだけの華々しさを持っているなら、これでもかと謳歌してほしい。

その方が、敵わな過ぎて、寧ろすがすがしいから。

だから蒼介には、王子役がぴったりだ。

私は極自然に微笑んだ。

優しくてかっこいい、私の憧れ続けた王子様なのだから。

「では王子が先に決まっちゃったけど、今度こそヒロインを決めます!」


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