ただあの子になりたくて


すぐに胸が甘く疼く。

目よりも胸はとても敏感だ。

私の心は誰より先に彼を見つけられる自信がある。

席がすっかり元通りになった教室の、ほぼ真ん中。

帰り支度を急ぐクラスメイトの中でも、目は勝手にそれらをかき分けて、彼にたどり着く。

リュックの中を覗いて、背の高い体を丸める蒼介。

そんな姿もいとおしい。

今の私は恋人なのだから、馴れ馴れしく声をかけても許されるだろうか。

私はなけなしの胸を張って、机の間を縫って歩く。

他の男子が時折頬を赤く染めてこちらを向いたけど、私は罪も感じずにただ進む。

私には彼の姿しか意味がないから、彼だけを見て。


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