ただあの子になりたくて
ちょっぴり震えている指を隠すように、背中でいじらしく指を組んで、スカートをひらひら揺らして女の子らしさを振りまきながら、彼に近づいていく。
きっと、とてもあざといだろう。
でも、彼の前で可愛くいたい。
ただ、彼に愛されてみたい。
だから私はぶりっ子の仮面を厚塗りして、今日も罪など知らないふりを決め込むのだ。
「蒼介、お疲れ様」
自信たっぷりににっこりと笑う。
かわいこぶって首を傾ければ、自慢の黒髪がさらりと肩から流れ落ちる。
そんな私に蒼介は顔を上げる。
ふわっとした短髪が、戯れるように揺れる。
そして、低いけど甘くて丸い声に、私の胸はきつく掴まれる。