恋をして
 そんな日々の中で、時々自信がなくなることがある。
―俺と彼女との関係は、このままでは一生"友人"のままなんじゃないか
と。そう思うと不安で夜も眠れず、苦しさで死にそうになり、自分の将来の希望が見えなくなっていた。
恋愛がこんなにも苦しくて、辛いものだなんて、俺は知らなかった。こんなにも辛いなら、いっそのこと恋なんてしなきゃよかった。
そんな風に思ってしまう日もあった。俺は恋に殺されかけていた。
 ある日、俺はいつものように彼女と会う約束をしていた。場所はどこにでもあるような居酒屋。
その日の夜、いつもの待ち合わせ場所で彼女を待っていると、人混みに紛れて彼女が現れた。
「オッス」
「おう」
軽く挨拶を交わし、2人で居酒屋へと向かった。夏ということもあり、夜でも蒸し暑く、汗ばんでしまう。
10分ほど歩き、目的地である居酒屋へと到着した。土曜日の夜、ということもあり、店内は客でごった返している。
「2人なんですけど、大丈夫ですか?」
「カウンター席でもよろしいでしょうか?」
「俺はいいけど、凜子ちゃんは大丈夫?」
「私も別にカウンターでいいよ」
「じゃあ、カウンターで」
「ありがとうございます!では、こちらへどうぞ」
店員にカウンター席まで案内され、2人で腰をかける。すぐに冷たい水が出てきた。俺はそれをすぐにガブ飲みした。身体に沁みわたるようだ。
「暑いねぇ」
「うん、マジ暑い」
「あっ、そうだ。酒呑む前に渡す物があったんだ」
「なになに?なんかくれんの?」
「はい、これ」
俺は鞄から藍色の小箱を取り出し、彼女に開けて見せた。
「結婚しよ。やっぱ俺、諦めきれねぇんだわ、凜子ちゃんのこと」
「ここでそれ言う?」
「いいじゃん。庶民的で」
「もう、馬鹿なんじゃない。マジキモい。でも、もったいないから受け取ってあげる」
「なんてね、やっぱダメだよね・・・って、えっ?」
「えっ?」
「結婚してくれんの!?」
「仕方ないからしてあげる。それに、これ以上告白されるのもウザいしね」
「マジか!!ありがとう!よっしゃあぁぁー!!」
「声でかいって!他の人の迷惑でしょ!本当に馬鹿なんだから」
そう言いながらも、彼女は少し嬉しそうに笑っていた。この日、俺は彼女と朝まで呑んだ。
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