山下くんがテキトーすぎて。
石けんを手にこすりつけて、意味もなく丁寧に洗っていく。
「絶対慣れてるなぁ、あれは」
「たしかに〜。エッチとかも上手そうじゃない?」
「年上のお姉さんたちと経験ありそ〜」
……な、な、な……えっちって。
えっちって、あのえっち…だよね。
「里奈は予定ないの〜?山下くんと!」
「今のとこまだそんな感じじゃないんだよね〜。でも、今度誘ってみよっかな」
……えっ?笹川さん今なんて?
誘うって…えっちするの?山下くんと?
そんなの……。
クラっと目眩みたいな感覚に襲われた。
そのままフラフラと女子トイレをあとにして、気付いたら自分のクラスの前まで来ていた。
そっと中を覗くと、幸い山下くんは眠っていた。
不安で眠れないとか言ってたくせに。
心の中でそう毒つきながら、今朝よりもずっと離れた距離にある席に静かに腰を下ろした。