山下くんがテキトーすぎて。
映画館は駅から徒歩で15分くらいの所にある。
大倉くんと他愛もないことを話しながら──道行くさなかで大勢の女性の方々の熱い視線を浴びながら到着すると、入り口はすでにたくさんの人で埋まっていた。
「うわっ、多いな」
と、大倉くんがこぼした。
「土曜日だからね……」
「ひとまず中に入ろっか」
「うん」
返事をしたと同時。
大倉くんの指先が私の手に触れた。
心臓が跳ねる。
顔を上げるとすぐに手を引かれて、私の数十センチ前を歩く彼の表情は見えない。