山下くんがテキトーすぎて。
映画館内に入ってみれば、思ったほど混雑はしていなかった。
通路も、人をよけて歩くだけのスペースは十分にある。
「映画、高校生は1人千円だよね」
と言ってお財布から野口さんを2枚取り出す大倉くんを見て、私は慌てて手を横に振る。
「いや!自分で出すよ!!私が観たいって言ったんだし!!」
「ん。まぁ、そうだけど俺が連れて行きたいって言ったんだし……てか、俺が好きで遠山さんに出したいっていうか……」
ひえええ!デートってすごいな!!
完璧女の子扱いだ!胸がぁぁ〜!!
「う、あ、ありがとう!でも大丈夫だよ本当に!」
それに、映画観たいって言ったのは誤魔化しだから……。
いや、ほんとに気になってる映画だったけど!なんか嘘ついちゃった罪悪感でいっぱい……。
「うん、わかった。じゃあ自腹でいこっか!」
すぐにこっちの意思を理解してそう返してくれる大倉くんは、やっぱり機転が利く人で、気づかいもうまくて。
こんないい人いない……。