山下くんがテキトーすぎて。



店をあとにして、大通りの隅にあるというその雑貨屋さんへ向けて歩き出す。



大倉くんの隣を歩くことにも段々と慣れてきた。


周りの人の視線は気にせず、目立たないように、でも大倉くんに恥をかかせないように堂々として歩くこと。



イケメンの隣を歩くのは大変なのだ。




「やっぱりまだ山下のこと好き……?」




唐突に、街のノイズにかき消されつつも、確かにはっきりと聞こえた。


朝と同じように私の少し前を歩く彼の表情はやっぱり見えなくて。



「……ごめん。今の質問忘れて」



数秒後、返事をしない私の耳に届いたのは、どこか切なさをはらんだ声だった。


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