山下くんがテキトーすぎて。


だって、山下くんと付き合ったら別れるのが決まってる。


飽きられたら、面倒くさいと思われたら、捨てられてしまう。


……こんな人だけど、どうしようもなく好きだから。



好きだから付き合いたくない……。




山下くんは黙ったまま何も言わない。

私は俯いてるから、表情もわからない。



ひどく長く感じた沈黙ののち、


「そう」


と、短い返事が返ってきた。


再び沈黙がやってきて、このままどうすればいいかわからなくなる。



山下くんにまたがった体勢で非常に恥ずかしいし、気まずいし、黙っているので降りるタイミングも計れない。




「……愛音ちゃん」



ふと、静かな声。

誘われるように顔を上げると、山下くんは笑っていた。綺麗すぎる笑顔。


私が知ってる中で1番、嘘くさい笑顔。


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