山下くんがテキトーすぎて。



「……行かないで」



風の音に混ざって、力ない声が耳に届く。



「お願いだから、大倉……

俺から愛音ちゃんを取らないで……」




瞬間、


初めから力のこもってない山下くんの指先が

するりと離れるのがわかった。



目の前で傾いていくからだ。


───デジャヴ。



「山下くん…!」

「山下っ!?」



大倉くんと私の声が重なる。

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