山下くんがテキトーすぎて。
終礼中も必死で教科書とにらめっこしててた。
「起立、礼」
日直の号令が教室に響くと、それを合図に私の心臓も高鳴っていくようだった。
追試開始まで、あと20分に迫っている。
ドク、ドク、ドク……。
追試。運命がかかっている追試。
落ちたらとんでもない。
追試で落ちる人ってめったにいないって聞いたけど、
私の馬鹿さだったらその「めったにない」ことも起きかねない……
不安で頭がぐるぐるしてくる。
あ、胃が痛いかもしれない……
もう、やだ……
ぎゅっと拳を握り締めると、
「……ん……」
隣で熟睡してたはずの山下くんが、眠たそうな顔をゆっくりと上げた。
ぼんやりとした瞳で私を捉える。
「よかった……まだ遠山がいて」
そう言いながら目をこする山下くん。
「ちゃんと言おうって……思ってたから、さ」
「言うって……何を?」
尋ねると、まだ完全に覚めきってないカオで山下くんが笑った。
「追試、頑張ってね」
「あ、うん!ありがとう!!」
わざわざ、これを言うために起きてくれたの?
どうしよう、嬉しいよ……
顔がにやけちゃう。
「遠山ならできるよ」
「そ、そうかな」
「うん。だいじょーぶ。俺がついてるから」
「山下くん……」
わあ……なんか感動してきちゃった。
山下くんが大丈夫って言うなら、ほんとに大丈夫な気がする。