ひと冬の想い出 SNOW
小鳥遊さんは人を安心させる力がある。
何があっても大丈夫、みたいな。
私もつられて自然と笑顔になった。
「ありがとうございます。でも、ただで家に置いていただくのは、ちょっと…」
「うん、だからルールを決めよう。」
ほんわかしてるのに、色々と考えてるんだな、小鳥遊さんて。
プロフィールと書かれた下にルールとかかれた。
「まずは…そうだな。」
「私ものは持てるので、家事ならなんでもやります。というかやらせてください。」
小鳥遊さんはまた左右に揺れながら考えている。
うん、多分考えている時の癖なんだろうな。
そして考えがまとまると止まるっと。
「うん。じゃあ掃除と食器洗いは任せるよ。洗濯物は…」
「小鳥遊さんが見られても大丈夫ならやりますけど、嫌でしたらやりません。」
小鳥遊さんは困ったように首を傾げた。
自分と他人との一線があるんだと思う。
まあ、それに付け加えて異性だし、さすがに洗濯物は嫌だったのかな?今日干しちゃったのも謝らないと…
「俺は見られても大丈夫だけど、そうすると、家事全てを雪乃に任せることになっちゃう。」
「…は、はあ。」
な、悩んでたのはそこですか!
随分と的はずれな考え方をしていて、私には新鮮で面白い。
おもわず笑ってしまう。
「あははっ。ご、ごめんなさい。あははっ。」
小鳥遊さんが私の顔を覗き込んできた。
たのしそーな笑顔と声で呟く。
「面白いことがあったの?」
「はい。ちょっと。あははっ!すみません。」
「謝らなくていい。…笑いたい時には、笑えばいいんだよ。」
「…はい。」
その言葉が、なぜか心にしみた。
笑いたい時には、笑えばいい…か。
うん、とても素敵な言葉。
「それで、雪乃が全部家事をやってもらうとして、俺がそれと同様の、何かをしようと、考えたわけですが。」
そう言うと、また紙に書き出していく。
ルールの欄に、『家事→雪乃(ヘルプで優人)』とかかれ、その下には『人探し→優人』と書かれた。
人探し…とは?
私の考えを察したのか、小鳥遊さんは他のルールも付け加えながら説明をしてくれた。
「雪乃を探すんだ。」
ルールの欄に付け加えられたのは、就寝時間と起床時間。
「私を?」
「そう、現実世界の、雪乃を。」
ルールを紙に書きながら、私の質問を聞いて、的確に答える。
うん、小鳥遊さんてとても器用。
しかも、書いてることは全くべつのことなのに。
「現実世界の、私を…」
起床6:30、就寝12:00と書き終わると手を止めて、その可愛らしい二重の瞳で私を見つめた。
また、優しく微笑んでくれた。
「…どちらにせよ、君がどこにいるのか、どうなっているのか、何があったのか、俺が調べるってこと。」
あぁ、そっか。
だから、人探し。
でも、住む場所も提供してもらって、家事を補うだけでそこまでしてもらうなんて…面目ない。
「いいのいいの。雪乃は悪くない。」
紙に目を落としていたため、表情は見えないけど、私はとても安らかな気持ちになった。
ルールはそのあと、3つ付け加えられた。
一つは、本棚の本を私が使っていいこと。
また、それと同様に水道代、ガス代、電気代を気にせず、使っていいこと。
ただし節電はするようにと言われた。
二つ目は、お風呂。
と言ってもシャワーしかないのだけれど、優人が入っているときは近づかない。
私はうっかりすり抜けることが可能だから。
三つ目は、寝る場所の指定。
「よいしょっと。」
あの本のたくさん並ぶ和室に、毛布と布団が置かれた。
ちなみに枕まで付いている。
押入れから出されたそれは、とても綺麗だった。
「時々妹が家にくるから、その時用。だから、使っていいよ。ソファで寝てもいいけど、足が透けるのは、俺の心臓に悪い。」
「こんなに綺麗なものを…!ありがとうございます!」
私は90度頭を下げた。
小鳥遊さんは優しい声で「うん。」といい、私の頭に手を伸ばす。
撫でようとしてくれたのがわかった。
けれど、その手は宙をかすめ、小鳥遊さんは私に触ることができなかった。
私は頭を上げて、小鳥遊さんより先に口を開いた。
「いいんです。気にしないでください。」
これが、今の私ですから、と。
何があっても大丈夫、みたいな。
私もつられて自然と笑顔になった。
「ありがとうございます。でも、ただで家に置いていただくのは、ちょっと…」
「うん、だからルールを決めよう。」
ほんわかしてるのに、色々と考えてるんだな、小鳥遊さんて。
プロフィールと書かれた下にルールとかかれた。
「まずは…そうだな。」
「私ものは持てるので、家事ならなんでもやります。というかやらせてください。」
小鳥遊さんはまた左右に揺れながら考えている。
うん、多分考えている時の癖なんだろうな。
そして考えがまとまると止まるっと。
「うん。じゃあ掃除と食器洗いは任せるよ。洗濯物は…」
「小鳥遊さんが見られても大丈夫ならやりますけど、嫌でしたらやりません。」
小鳥遊さんは困ったように首を傾げた。
自分と他人との一線があるんだと思う。
まあ、それに付け加えて異性だし、さすがに洗濯物は嫌だったのかな?今日干しちゃったのも謝らないと…
「俺は見られても大丈夫だけど、そうすると、家事全てを雪乃に任せることになっちゃう。」
「…は、はあ。」
な、悩んでたのはそこですか!
随分と的はずれな考え方をしていて、私には新鮮で面白い。
おもわず笑ってしまう。
「あははっ。ご、ごめんなさい。あははっ。」
小鳥遊さんが私の顔を覗き込んできた。
たのしそーな笑顔と声で呟く。
「面白いことがあったの?」
「はい。ちょっと。あははっ!すみません。」
「謝らなくていい。…笑いたい時には、笑えばいいんだよ。」
「…はい。」
その言葉が、なぜか心にしみた。
笑いたい時には、笑えばいい…か。
うん、とても素敵な言葉。
「それで、雪乃が全部家事をやってもらうとして、俺がそれと同様の、何かをしようと、考えたわけですが。」
そう言うと、また紙に書き出していく。
ルールの欄に、『家事→雪乃(ヘルプで優人)』とかかれ、その下には『人探し→優人』と書かれた。
人探し…とは?
私の考えを察したのか、小鳥遊さんは他のルールも付け加えながら説明をしてくれた。
「雪乃を探すんだ。」
ルールの欄に付け加えられたのは、就寝時間と起床時間。
「私を?」
「そう、現実世界の、雪乃を。」
ルールを紙に書きながら、私の質問を聞いて、的確に答える。
うん、小鳥遊さんてとても器用。
しかも、書いてることは全くべつのことなのに。
「現実世界の、私を…」
起床6:30、就寝12:00と書き終わると手を止めて、その可愛らしい二重の瞳で私を見つめた。
また、優しく微笑んでくれた。
「…どちらにせよ、君がどこにいるのか、どうなっているのか、何があったのか、俺が調べるってこと。」
あぁ、そっか。
だから、人探し。
でも、住む場所も提供してもらって、家事を補うだけでそこまでしてもらうなんて…面目ない。
「いいのいいの。雪乃は悪くない。」
紙に目を落としていたため、表情は見えないけど、私はとても安らかな気持ちになった。
ルールはそのあと、3つ付け加えられた。
一つは、本棚の本を私が使っていいこと。
また、それと同様に水道代、ガス代、電気代を気にせず、使っていいこと。
ただし節電はするようにと言われた。
二つ目は、お風呂。
と言ってもシャワーしかないのだけれど、優人が入っているときは近づかない。
私はうっかりすり抜けることが可能だから。
三つ目は、寝る場所の指定。
「よいしょっと。」
あの本のたくさん並ぶ和室に、毛布と布団が置かれた。
ちなみに枕まで付いている。
押入れから出されたそれは、とても綺麗だった。
「時々妹が家にくるから、その時用。だから、使っていいよ。ソファで寝てもいいけど、足が透けるのは、俺の心臓に悪い。」
「こんなに綺麗なものを…!ありがとうございます!」
私は90度頭を下げた。
小鳥遊さんは優しい声で「うん。」といい、私の頭に手を伸ばす。
撫でようとしてくれたのがわかった。
けれど、その手は宙をかすめ、小鳥遊さんは私に触ることができなかった。
私は頭を上げて、小鳥遊さんより先に口を開いた。
「いいんです。気にしないでください。」
これが、今の私ですから、と。