ひと冬の想い出 SNOW
「え?」


ここどこ?


念のためもう一度言おう。


ここどこ?


いやいや、待て待て。


どうしてこうなったの?


私はその場に立ち上がる。


これは、人の家だ。


いや、まあ動物とかの家でないことは確かなのだけれど。


うーんと、言いたいのはそういうことじゃなくて。


第一にここは部屋ではなかった。


しっくりくる言葉といえば、「廊下」。


後ろを振り返ってみると、そこは玄関。


右隣には、扉。


真正面にはリビング。


左隣にはキッチン。


つまり、ここは私の家ではない。


私は歩きだす。


リビングには、見慣れない黒色のソファーと、その正面に置かれる低いガラスの机。


ソファから一直線上にテレビが置いてある。


まず第一にうちは一軒家の三階建。


私は窓の近くまで行き、外を見る。


窓から見えのは、隣のアパートらしき建物と、そのアパートの一階、二階の窓。


ここの広さと高さ的に、アパートの可能性が一番高い。


じゃあ、なんで、私がこんなところにいるのかな?


…よくわからない。


昨日のこともよく思い出せぬまま、元の位置に戻った。


あまり、動かないほうがいいだろう。


すると、


-ガチャ


「…」


「…」


右隣の部屋から出てきた、栗色の髪の青年。


サラサラとした綺麗な髪が、ちょうどいい長さで整えられている。


今、バッチリと目があった。


私も彼も、驚きすぎてか反応が薄いのかは定かではないが、声を出すことはなかった。
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