ひと冬の想い出 SNOW
まだ、目を合わせたまま固まる。


真っ黒な大きな瞳。


すらっと伸びた鼻。


それにしても、どうして驚かないのかな?


だって、家に知らない人がいるんだよ?


そう思っていると、彼が先に目を逸らした。


何も言わず、キッチンへ行き、水道水をコップについで一気に飲み干す。


飲みおわしたコップを軽く洗うと、次は洗面所に行って顔を洗う。


その後次々といつも通りと呼べるであろう朝の支度をおわしていく彼。


付きまとってるのに全然目を合わせないし…。


てか、付きまとってたら自然と目がいくものじゃないの?


最終的に、今は机の前に座り、食パンを食べている。


私は目覚めた場所に立って見ている。


彼は一行とこちらを見ない。


もうしかして、目があったと思ったのは勘違いだったのかな?


私の顔は青ざめる。


ってことはもしかして…


「私、見えてないの?」


「ブッ!」


音のした方を見ると、彼が飲んでいたコーヒーを噴き出していた。


方を鳴らして静かに笑いをこらえている。


なんだ、聞こえてるじゃありませんか。
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