ひと冬の想い出 SNOW
「ごめんごめん。」


彼は食パンを置いて、手招きをする。


あなた、言動と行動があっておりませんよ?


そう思いながらも、彼の言う通りに机を挟んで彼の前に座った。


改めて見ても整った顔をしていらっしゃる。


「本当にごめん。俺、そっち系信じてなかったから、おどろいて。」


本当に誤っている様子の彼。


まあ、一部笑いが含まれているのが気になるところではありますが。


でも、そんなことより、私はある単語に首をかしげる。


そっち系…とは?


「こちらこそ。人様のお宅に勝手にお邪魔してしまって、申し訳ありません。」


私は頭をさげる。


だって、どう考えたって悪い方は私だもの。


なぜこうなったのかは覚えてないけど。


私の行動に彼は感心した様子でつぶやいた。


私はその言葉に、またもや驚くのだった。


「幽霊でも、礼儀はしっかりしてるんだね。」


「え?」


「え?」


2人、目を合わせて固まるしかできなかった。


目を丸くするのは、彼ではなく私の方だったのだ。
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