ひと冬の想い出 SNOW
しかし広い家だ。


確かに一軒家と比べれば狭いかもしれないけど、アパートで比べるならば間違いなく広い。


大学生の一人暮らしにしてはかなりいい物件だと考えられる。


そんなことを思いながら、洗濯機の中身を出しカゴに入れ、ベランダに持ってきた。


ベランダは、リビングの大きな窓から出られるようになっている。


私が持っていれば、物も一緒に壁をすり抜けるみたい。


だから、扉も窓も開ける必要がない。


-ガラガラ


とも思ったんだけど、やっぱり換気は必要。


ちなみに、扉の手すりも窓のサンも、触ろうと思えば触れる。


ただ、何も考えないとすり抜ける。


「なんで便利な体なのでしょう。幽霊というものは。」


そんな独り言を時々つぶやきながら洗濯物を干し続けることたかが10分ほど。


あまりにも少ない大学1年男子の洗濯物に若干驚きつつひと休み。


今は、9時半を回ったところ。


小鳥遊さんが帰ってくるのはまだまだ先だ。


「お腹も空かないんですよね…」


何か食べたい!という欲求もなければ、栄養不足のような感じもしない。


幽霊という感覚はないけれど、確実に普通の人ではないことは感じられる。


幽霊は、人間が考えていたものと、かけ離れた存在だったのではないかと私は思う。


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