ひと冬の想い出 SNOW
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「…、…乃、雪乃!」


「…」


名前を呼ばれて起き上がる。


あれ、ここどこだっけ?


自分の場所と、起こしてくれた人、これまでに起きたことを1秒で思い出す。


彼は小鳥遊優人さんで、私は気がついたら幽霊になってて、なんでかわからないけどここにいる、と。


「おはようございます。小鳥遊さん。」


ソファで寝てしまっていたみたい。


別に疲れてはないんだけど、眠たくなる。


私は立ち上がって小鳥遊さんの前に立ち、時計を見る。


2時を回ったところだった。


「小鳥遊さん午後講義ないんですか?」


「うん。今日はないんだ。」


確かに私も午後の講義がない日もあった。


それと一緒のことだろう。


すると、小鳥遊さんは神妙な顔をしてつぶやいた。


「…幽霊って、寝るとき足が透けるものなんだね。」


足が、透ける?


今自分の足を見て見るけど、起きているからかきちんとある。


それじゃあ、自分じゃわからない。


「雪乃が消えちゃうかと思った。」


そういう小鳥遊さんは、優しい顔でそういった。


どちらかというと、私がいなくなると、小鳥遊さんは助かるのでは?


「消えなくてよかった。雪乃はなんで幽霊になったのかも覚えてないみたいだから。」


確かにそれはそうだ。


今はこの通り実体化(幽霊のためなんとも言えないが)している。


しかし、いつ消えるかはわからないのだ。


「それにしても…」


小鳥遊さんはバックをおろして、あたりを見回しまわした。
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