たとえばモラルに反したとしても
「じゃあ俺と渚で送る!」

 浩と渚は同じ中学出身で家も近いらしいので、その流れになる。
 その浩に美羽が眉を寄せる。

「ええ~、渚クンと二人がいいのに!」

「はいは~い、贅沢禁止! 渚は俺のモノだもんね~」

 ふざけて渚に抱きつく浩を渚は苦笑しながらも好きにさせている。

「っと、じゃあ宮は俺か」

「でも弓弦、電車反対だよ。あたしは家も近いし大丈夫だからもういいよ」

「いいから、送るって」

 弓弦の言葉はさりげないけれど、否を言わさない強さを持っていた。


 とりあえず駅へと向かい改札口でそれぞれの行き先へ別れる。


「じゃあまた明日~」

 浩が相変わらず無駄に元気に手を振っている。

 それぞれに別れていった後に、桐華は弓弦に向きあって告げた。

「弓弦、悪いけどあたし、ちょっと用事がるの。だからここでバイバイしていい?」

「……なんで? 宮は俺が送るの迷惑?」

 桐華の言葉に弓弦は一気に機嫌を損ねる。

「そうじゃないよ。ただ、本当にちょっと寄るところがあるの」

「どこ?」

「ゴメン、言えない」

「……ウソだ」

 疑う弓弦の目が問い質している。


 ――俺と一緒にいたくないんだろう、と。

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