たとえばモラルに反したとしても
 ずっとずっと考えて、ようやく気がついたのは寝る直前。


 消しゴムを拾って渡した時の「ゴメン、ありがと」と言った三好の声。


 思い当たった途端に全ての糸が一斉にほぐれた気がした。

 背の高さに体つきに髪の長さ。

 全ての糸がほぐれて一本につながる。

 ただ確信は持てなかった。
 本当にあの地味で存在感のない三好なのかと。

 そう考えるにしては、つやめいて色気のあるあのホストの彼とはあまりにも違いすぎる。

 けれど、今、向きあってじっと観察して気がついた。


 ――耳に、ピアスの穴がある。


 長めの髪で隠しているのだろうが、注意して見れば分かる。

 それに声。

 これだけ話せば分かった。


 確実に同じ声。


 意外にも柔らかくて、少し甘い。

 昨日、教室で初めて聞いた三好の声が印象に残っていたのだ。

 だから桐華はもう一度自信を滲ませた声で告げた。

「シュウってホストは、あんたよ、三好」

 しばらく沈黙を落として三好は小さく首を振った。
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