たとえばモラルに反したとしても
(こいつ……全然違うじゃないの)

 根暗で目立たずじっと黙って座っているだけの地味男のくせに!

 不敵な態度がカチンと来る。

 どこかバカにされたような気がして桐華は目を尖らせた。

(笑ったこと後悔させてやる。パシリにしてやろうかしら。それともドレイがいいかしら)

 フッと自分の考えに笑ってしまう。

 本当はそんなことなんてどうでもいいくせに、どうしてこんなヤツに絡んでいるんだろうと、自分の衝動が分からなくて笑えた。

「分かったわ。じゃあ仕事が終わってから連絡して」

「そんな夜中から会うの?」

「いやならバラすから」

 脅迫の言葉に沈黙を落とした三好は、しばらくしてから口元に薄い笑みを浮かべた。


「分かりました。お姫様のお言葉のままに」


 そう言って深々と頭を下げた。
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