たとえばモラルに反したとしても

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 住宅街の中にある普通より少し大きな一軒家。
 洋風の洒落た外観。

 門を開けようと手を掛けた時、声を掛けられた。

「桐華、ちょっと話があるんだけど」

 声で相手が分かるから、わざとらしいほどゆっくりと振り返って桐華は尋ねた。

「話? じゃあ……家、入る?」

「……いいの?」

 一瞬、躊躇したようだけれど、呼びかけた相手はすぐに桐華に近寄って、そして鍵を取り出す桐華の背後に立った。

「入れていいの? 俺を」

「……別に、どうぞ」

 抑揚のない声で答える桐華に小さな溜息をこぼす。

「変わんないね、桐華」

 その言葉に桐華は苦笑する。


 変わりようがない。

 何一つ変化のない日々に、何を変わればいいと言うの?


 ああ、と背後に立つ相手のことを思い返して桐華は笑いながら言った。

「そう言う圭祐は変わったね。彼女出来て。あんな可愛い子と付き合うなんて、結構目立ってるよ?」

「……そうだな」

 小さく同意する幼なじみ、神森圭祐の声を背中で聞きながら、差し込んだ鍵を回す。


 ガチャン、と重たい鍵を開ける音をさせてから桐華は扉を大きく開いた。


 どこかで警告を促す光がちらつくけれど、一度瞼を閉じると、桐華は振り返って背の高い相手を見上げて迷いなく告げた。

「どうぞ」

 シンとしたひとけのない家に圭祐を招き入れた。
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