たとえばモラルに反したとしても
「宮、あんたまた告白断ったんだってね」

 こういう噂はすぐに広がる。

 誰がどうやって入手しているんだろうと不思議に思う。

 棚橋美羽(たなはし みう)は桐華と違って背が小さくて可愛らしい雰囲気を持つけれど、噂好きでいつだってすぐに情報を入手してくる近所のおばさんのようだ。

「バレー部の笹川先輩だったんでしょ? カッコイイじゃん、あの人。三年にとっては残り少ない高校生活なんだから、思い出作りに付き合ってあげればいいのに」

 どれだけ上から目線なの? と美羽の言葉に思わず苦笑する。

 付き合ってあげれば、なんて偉そうに。


 付き合うだとか、カレカノとか。


 なんか、面倒だからいらない、そう言うの。

 そんなことを言ってくる美羽自身は、一筋に想う人がいるくせに、気軽に付き合えなんて助言する。

「美羽、おまえなぁ。適当に付き合うなんて男に対して失礼だぞ」

「びくったぁ。弓弦、話聞いてたんだ」

 ひょいと美羽の後ろから苦笑しながら話に入って来たのは竹原弓弦(たけはら ゆずる)。

 背も高くてカッコイイから、クラスでも目立つタイプだ。

 一年生の間はサッカー部に所属していたけれど、足を怪我して辞めてしまった。
 それでもスポーツマンらしい雰囲気は充分に女子から人気がある。

 一緒にいるのは栗原浩(くりはら ひろ)。

 浩は結構おしゃべりで調子乗りでうるさいヤツ。弓弦も明るいけれど、浩の方は騒がしいと言うのが似合う。

 二人はウマが合うようでいつでも一緒につるんでいる。
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