たとえばモラルに反したとしても
分かっているくせに。
わざと問いかける意地悪。
分かっているのに、触れてこない。
少し意地になる。
目を閉じて三好の指をちゅうと吸い上げる。
三好は耳元に顔をよせると淫靡に囁く。
「それ、いいね。……すごく、いいよ。感じるね」
クスクスと耳たぶに息を触れさせながら笑う。
くすぐったい。
けれど痛い。
三好の声が耳の中に直接落ちて、体のあちらこちらに火を付けていく。
「姫はこれで満足? それとも他にも?」
一つも思い通りにならない。
全部三好のペース。
悔しくてどうにかなりそう。
ううん、もう、どうにかなってしまっている。
どんなことにも対して興味がなかった。
誰かに抱かれることだって、多分、別に構わないと思っていた。
でもまさか自分から焦れるほど誰かに触れてもらいたいと思うなんて、考えられなかった。
きっと今は狂乱の渦の中。
この男が運んできたひどい乱気流に飲み込まれているだけ。
最後のひと言は、それでも命令で告げた。
「……あたしを……抱きなさいよ」