たとえばモラルに反したとしても
 プンスカだ~とプウッと膨れて見せる浩を弓弦が後頭部をはたいた。

「毎朝毎日、懲りねえやつ」

「酷いわ、弓弦ちゃん! お母さんはそんな子に育てた覚えはありません!」

「おまえの子になった覚えもねえよ」

 ぎゃははと浩が笑った途端、廊下の方に気がついて走り出した。

「な~ぎさ! 癒しの天使だぁ!」

 浩の友達で、最近よくつるむようになった浅原渚が浩を呼んでいた。
 駆け寄って抱きつく浩を、渚はいつものように苦笑して「はいはい」とあしらう。

「ああ! アミちゃんだぁ。今日もかっわいいね!」

 渚の隣に神森圭祐。その彼女である日永アミも一緒にいた。

「浩クン、いつも元気だね」

 声優のような可愛らしい声で、窓際の男子が一斉に振り返っていた。

 相変わらずアミは憧れの的のようだ。

 そんな空気に気がつきもしていないように渚が照れたように言った。

「浩、ジャージ貸して。体育の準備忘れた」

「やっぱ渚だなぁ~。相変わらず忘れ物大王だな。ちょい待って」

 有名人の渚が立っているから、クラスの女子がチラチラと見ているけれど、渚自身はそんな視線に欠片も気がついていない。
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