たとえばモラルに反したとしても
 渡されたジャージをやたら大事そうに握りしめてから渚が笑った。

「助かるよ、浩。お礼に今日、帰りにドーナツ行かない? 奢るよ」

「え、マジで、行く行く! 美羽ちゃんたちも誘うからアミちゃんも参加してよ!」

「おい、俺は無視かよ」

 すぐに神森圭祐が突っ込んで来て、渚が笑う。

「もう、浩は相変わらずだな。圭祐も、もちろん行くよね?」

「渚ってば、超優しい! 神森なんてアミちゃん独り占めしている時点で俺の敵だぁ」

 あはは、と渚たちが笑う。

「ま、いいや。俺には宮ちゃんがいるもんねぇ」

 勝手に言ってる、と呆れた桐華だったけれど、弓弦は容赦なく浩の頭をはたいていた。


 今日は早く帰りたかった。

 授業中も眠たくて仕方なかった。

 あんな仕事をしていて、よく学校に普通に通っているな、と思って三好を何度か振り返ったけれど、興味の無さそうな授業はどうやら眠っているようだった。


 早く帰りたい、面倒くさい……


 けれど早く帰ったって誰もいない家。

 それよりはみんなといる方がいいと、桐華もついていくことにした。

**

 相変わらず浩の独断場のような雰囲気。

 まあそれなりに楽しいからいいけれど。

 こうやってみんなでつるんでいてもどこか完全には乗り切れず、退屈で仕方なかったのに、もう昨日の自分はいない。
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