たとえばモラルに反したとしても

 どこにいても考えている。

 誰といても、考えてしまっている。


 今日も、仕事が終わったら来ることに……

 そう三好に命令した。

「明日も来なさい」と、ベッドの中で背中を向けたままで命令した。

 夜中に、タクシーを拾うからとシャワーも浴びずにあっさりと帰っていた三好の後ろ姿を見たくなくて、桐華は玄関の鍵も閉めに行かないまま眠った。


 あんなにあっさりと帰るなんて……


 乱されたのは自分だけなんだと、そう突きつけられて虚しくなる。



 ばいばいって、浩が精一杯手を振る。

 今まで何も思わなかったけれど、浩っていつも一生懸命で案外可愛い。
 でもいつもの軽口、カノジョが欲しいとか、その内心は全然見えない。

 三好だって、なんにも見せない。

 学校で地味な三好なんて多分ニセモノ。

 けれどそれを知っているのは桐華だけ。
 他の人にとっては、あの地味な三好が本物に見えている。


 オトコノコは分からない。


 三好は全然分からない。

 桐華に対して何を思って抱いていたのか。
 何も思わずに命令のままに抱いたのか。

 それでも夜を待ちわびてしまう。

 三好に、もう一度会うと思うだけで、全身が震えた。

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