たとえばモラルに反したとしても
「次は、どんな風にキスしたい?」

 全部、三好に握られている。
 桐華は全てを三好に握られている。

 言葉で求めなければ、肩一つ抱いてくれない。
 腕を伸ばして抱きしめてもくれない。
 だからどんどんと貪欲な女が出来上がって行く。
 心も体も、日常から切り離されてまるで自分じゃなくなる。

 宮野桐華と言う人間は、三好の前では構築出来ない。

 全部欲しいのに。

 三好は何もくれない。

 桐華が求めれば、簡単に差し出すクセに、
 コアにあるものは、何一つ与えてくれない。

 キスも吐息も全て三好に奪われていくばかり。

 堪えきれずに零す溜息の欠片も奪われて、何もかもが三好のものになっていく。


 桐華の全てを乱れるだけ乱して、三好はクスリと小さく笑った。



 脱ぎ捨てたシャツを羽織る三好に何も期待せずに問いかける。

「シャワー浴びる?」

 どうせすぐに帰るだろう。
 さっさとこの広くて音のしない家を簡単に出て行く。
 疲れてぐったりとしている桐華を振り返ることもしないで帰っていってしまう。

 溜息をこぼす桐華に、三好は口元にいたずらな笑みを浮かべる。


「浴びてもいいの?」


 え? っと振り返った桐華に、三好は笑う声音で思わぬ事を言った。
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