たとえばモラルに反したとしても
キエテイク日常
簡単なメールさえも送っていなかった。
連絡するなんて言って通話を切っておいて、それはないよね、と自分でも呆れる。
朝になって桐華は弓弦に何も連絡をしていなかったことを思い出した。
「まあ……いいや。すぐに学校で会えるし」
あんなに弓弦のことを拒んでしまったのに、現金なものだ。
三好の腕に触れながら眠っただけで桐華は何も憂うことなどない気分になっている。
人と一緒に眠ることがこんなに暖かくて安らかな気持ちにさせるものだなんて、今まで知らないで生きてきた。
そして一度でも知ってしまった桐華は、これからどうやって独りで眠ればいいのか途方にくれてしまうだろう。
それが自分でも怖くなっていた。
朝、いつ起きたのか、三好はいなくなっていた。
始発が動き出す頃に出て行ったのかもしれない。
起きて気がつく、隣に三好がいないこと。
その時の落胆と来たら自分で嘲笑(あざわら)いたくなるほど。
分かっているなんて言い聞かせて、本当は何も分かりたくないワガママ娘。
三好との間には、恋愛感情なんてない。
ただ桐華が弱みを握って服従させているだけ。
だから眠った桐華を置いて出て行ったって当然だと。
分かっていると、何度も言い聞かせているのに。
胸の中にぽっかりと大きな穴が開いて、冷たい風が吹き抜ける。