たとえばモラルに反したとしても
「圭祐がどうかしたの?」

 落ち着いた桐華の声に、アミは今にも泣きそうな表情で口早に言った。

「圭祐君……三年の先輩に連れて行かれたらしいの! アミの事、好きだって言う先輩に、圭祐君が……」

「分かった。あたしたちも探すから。アミちゃんは先生の所へ行って。弓弦、浩も一緒に探してもらって」

「お、おう。分かった」

 すぐさま駆け出した弓弦に続いてアミも職員室へと駆け出した。


 バカみたいだ。


 女の子の取り合いで、それも一方的な恨みなんか持って、稚拙でバカみたいだ。
 桐華は心の中で毒づきながら思い当たりそうなところを考える。

**

 駆けつけた時、丁度予鈴が鳴り終わった時だった。
 三年の何人かが資料室から出てきたのが遠目に見えた桐華は慌てて資料室の扉を開いた。

「圭祐!」

 床に倒れている圭祐はぐったりとしてヒドイ有様だった。

 すぐにケータイで弓弦に連絡をしてから、桐華は圭祐をそっと抱き起こす。

 眼鏡はどこかへ飛ばされている。
 唇と鼻から血が流れている。
 目の横には既にアザが黒く変色を始めている。
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