たとえばモラルに反したとしても
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圭祐の怪我は手首の骨折が一番酷くて、後は重傷の打撲がほとんど。
すぐに三年の首謀者は呼び出しを受けていた。
結局、圭祐も三年の言いがかりに安っぽく分かりやすい挑発をしたことが判り、三年は数日の停学処分だけで、それほどの大事にならずに終わってしまった。
今、圭祐の家に桐華たち全員が集まっている。
「もう骨折以外は大したことない」
大したことなかったんだ、と圭祐はいつものように温度を持たない声で告げる。
あの事件から五日が経った。
学校を休んでいる圭祐を見舞いに来たのだ。
「でもさ、あいつら許せない。三人で一人とか、めちゃくちゃ卑怯だ! 俺、許せない!」
浩が拳を握りながら珍しく尖った声を上げると、渚が頷いて同意を示す。
弓弦はじっと黙ったまま俯いている。
「いいさ、俺もつい挑発したんだし、まあいいんだって」
重くなりかけた空気に浩はフッと一つ息を吐き出してから明るい声を上げた。
「アミちゃん、遠慮しないで、ほら神森の隣に、どうぞどうぞ」
圭祐と離れて座っていたアミを振り返って浩が調子よく手招きすると、アミははにかんだ笑みを浮かべて立ち上がった。