たとえばモラルに反したとしても
 女から見てもその笑顔は可愛らしくて、桐華は自分もこんな可愛らしい女の子だったら、きっともっと甘え上手になれたかもしれないと思いながらそっと圭祐を見遣る。

 アミが隣にちょこんと座ると圭祐は少しだけ座る位置を変えた。

「もう、神森ってばクールだなぁ! 俺ならアミちゃんが隣に座ったりしたら思わず抱きしめちゃうっての!」

「もう浩うるさい。出て行っちゃえ!」

 美羽がすぐに浩の腕を出て行けとばかりに押す。
 押された浩が渚にぶつかり、そのまま渚に抱きついた。

「渚ぁ、美羽ちゃんがヒドイですぅ。渚は俺の味方だよね!」

 ふざける浩を、渚は「はいはい」と大らかに笑って自分に巻き付く浩の手をポンポンと叩く。

「もぅ、浩ってば、すぐに渚君に甘えて! 渚君もこんなヤツ、甘やかしたらダメだからね!」

 美羽ちゃん、ひど~い、と浩の声。

 甘えたような声のくせに、本気で甘えようとしていない。


 分からないヤツ、浩。

 もしかして、本当は女の子じゃなくて、男の子、例えば渚を好きだとか?


 そこまで考えて、まあどうでもいっか、と桐華はもう一度圭祐へと視線を動かす。
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