たとえばモラルに反したとしても
「おい、みんな行くぞ」

 慌てて美羽も浩もカバンを手にして立ち上がる。

「じゃあ、あとはお若いお二人で!」

 浩が圭祐の部屋の扉の前で振り返って手を振りながらそう言って笑った。
 桐華だけはテーブルの上のグラスをお盆に乗せて片付ける。

「あ、宮ちゃん、後はあたしがするから大丈夫よ」

 すぐにアミが手を差し出す。

「でも、今、誰もいないし片付けとか……」

「うん、いいよ。圭祐君に聞きながらあたしがするから。ね、みんな行っちゃったよ?」

「……分かった。ありがとう、アミちゃん」

 バイバイと満面の笑みで手を振ってくれたアミに桐華も小さい笑みを返してから部屋を出た。


 ――カノジョはあたし。あなたは関係ないよ。


 まるでそう言われた気分。
 柔らかい綿に何重にもくるんだアミの棘が桐華の指先を刺した。 


 外に出ると熱すぎる残暑の夕暮れ。

 もう十月に入ったくせに太陽はいつになく働いていて、もうすぐ沈んでいく間際だと言うのに秋らしからぬ熱を投げつけていた。
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