たとえばモラルに反したとしても
玄関で脱いだ弓弦の靴を見て、こんなに大きいんだと驚く。
背も高いから靴のサイズも大きいのだろう。
三好の靴は……もう少しサイズが小さかった。
そんなことを考えてしまう自分がひどく淫らな女になったような気がして頭痛を覚える。
リビングに通してから窓に近寄る。
長い影を作っていた夕日も沈んで辺りは夜に衣替えをしている。
カーテンを引いて桐華は弓弦の方を振り返った。
「コーヒーでも……」
言いかけて、そう言えば少し前に同じように圭祐に告げたな、と思い出した。
家の前で呼び止められて、圭祐を家に招いた時も、カーテンを閉じてから「コーヒーでも飲む?」と同じ言葉を告げたことを思い出す。
そしてあの日の夜、初めて三好がこの家に来た……
「宮」
全てを思い出す前に弓弦が空気を切り裂くような鋭い声を出して桐華を射抜くように見つめる。
居心地の悪さを感じて桐華は目を逸らせながら冷蔵庫へと向かう。
「適当に座って。今、アイスコーヒー出すから」
「宮、いいから話を聞いて。ずっと話をしたかったんだ」
弓弦の強い声に、いくらか圧されて桐華は諦めてソファーに腰を下ろした。
適度に沈む上質の柔らかさに包まれる。