たとえばモラルに反したとしても
「ねえねえ、宮ちゃんと神森は同中(おなちゅう)だったんだろ?」

 急に浩から聞かれて「そうだけど?」とぶっきらぼうに返事する。

「仲良くなかったの?」

「ん? 普通だよ。二年の時は同じクラスだったけど」

「そうなんだ。でも、今は全然しゃべらないよね?」

 下からうかがうように覗き込んでくる浩は、どこか幼く見える。

 浩の聞きたいことも言いたいことも意図が分からずに、桐華は思ったことをそのままに告げる。

「そんなことないけど……でも別に同中だからって誰とでも仲良くするわけじゃないでしょ? 浩だって渚君以外はそんなに絡んでないじゃん」

「あ、そうだね。特に女子なんて、どっちかと言うと絡んでくれないよね、俺に」

 あはは、と笑う浩。

 それから桐華にまたペタリと体を寄せて「早く宮ちゃんと一緒に歌いたいなぁ」なんて、本当に思っているのかどうか分からない軽い口調でポッキーに手を伸ばしていた。


 腕を密着させているくせに、手はお菓子を握っている。

 全然、興味なさそう。


 なんで浩は、こうやって女の子に構うんだろう。

 分からないけれど、それが浩なんだろうな、と桐華もポッキーに手を伸ばす。

「あ、宮ちゃんも食べる? じゃあ浩の咥える反対側から食べてきて!」

 ポッキーの持ち手の方を咥えて差し出す浩。

 期待なんかしてないくせに。

 笑って「バカ浩!」って言われることを待ってるクセに。

 それが分かったから、桐華は浩の両肩に手を乗せると、顔を傾けてポッキーのチョコのかかった先を口に含んだ。
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