3B
◆プロローグ◆
これから訪れる悶々とした夏の初め。仕事の休憩時間の喫煙所。
水沢桜は、腕にある無数の傷を見て、ふと思った。絶対付き合うなと言われてる3Bってなんだっけ…1つは美容師、2つ目はバーテンダー。最後の1つが思い出せずモヤモヤする。もうすぐ仕事に戻らないといけないが、最後のBが思い出せないことが苛立って、最後の煙草を吸い始めると同時にスマホを制服のポッケから取りだし検索する。
「あ、バンドマン!!」
喉の奥で詰まっていたものが、つい口に出てしまう。喫煙所に誰もいなくて良かったと1人安心した。煙草を吸い終え仕事に戻る。この時期、介護の仕事は冷房完備といえ、人1人持上げる仕事だけに暑さと闘わなければならない。その上、利用者に怪我などさせるなど持っての他だ。休憩中に思い出した3Bについて気になるも考える暇などなく、黙々と仕事をこなしていく。

「お疲れさまでした」
業務終了時間と共に挨拶を済ませ足早に職場を後にする。何時にもまして早々と帰るには訳がある。3Bの最後に思い出したB=バンドマンのせいだ。ふと思い出しただけなのに、何年も前の記憶が蘇ったのだ。

自宅に帰ると過去の日記や手帳を物色する。

既に棄てたものも多くあるが多少残ってる音源、DVD、チェキなどが懐かしい。

純粋だったはずが、泥沼な男関係などが嫌と言うほど思いださせられる。


*


高校生活も残すとこ3ヶ月。周りはセンター試験だの慌ただしくも苛立っているが付属大学への進学が決まっていて、高校で友達など片手ほどしかいなかったので周りに興味がなく桜にしては毎日が退屈だった。
そんなある日、何時ものように当時好きだったアイドル誌をパラパラ捲っていたらアイドルとはかけ離れたバンドが掲載されていた。
ただただ吸い込まれていく感じがして気になって仕方なかったので音源を聴いてみることにした。
世間的にヴィジュアル系バンドという類いになるが予想外にも曲は昭和歌謡のようで心地よく歌詞に共感できることで嵌まるには時間がかからなかった。
ヴィジュアル系など知りもしなかったのでネットなどで検索する日々。ヴォーカルがロリータ好きと知り、元々興味あったのもありロリータファッションの勉強を自分なりにしていると「卒業おめでとう」の言葉と共に高校生活は終わった。

桜は卒業祝いに祖父からロリータ服一式買い揃えることのできる額を現金で貰ったのでロリータ服を揃えた。高校時代のバイト代もあったので嵌まったバンド『S』のファンクラブにも入会。
大学生活も特に友達を作ろうと思ってないので期待もくそもない。ただただ、ライヴに行きたい、好きなファッションを楽しみたかった。
親から初日からロリータ服はやめなさいと忠告されていたので、初日くらいはスーツで登校した。

「桜おはよー‼」

声をかけてくれるのは高校の時からの友達である麻美だ。
集団生活が苦手だった桜にとっては貴重な友達である。学校辞めたいと大騒ぎになったときや試験の時は必ず助けてくれていた麻美が学部が違えど、同じ大学なのは心強い。

「じいや、また宜しくね」

高校3年間、お世話が係をしてくれていた事、何事もなければ、この先4年間またお世話してもらう仲なので、桜は麻美を『じいや
』と呼ぶようになっていた。麻美もその呼び名に抵抗はない。むしろ自分でも『じいや』と言うこともある。

入学式も終えて学部の中でもコースに別れる際「またあとで」と互いに声かけし、桜は入学式が行われた大講堂を後にし小さめの教室へと移動する。桜のコースは福祉コースで、養護教諭や心理学を学ぶ人たちよりだんとつ人気がなく少人数だった。
明日から始まる授業の内容、自己にてコース内でも更に細かく専攻する科目を選び時間割を作りパソコン入力しなくてはならないなど、ざっと説明を受け、軽いオリエンテーションが終わった。

桜は麻美に終わった事をメールし返事がくるまで図書館で時間を潰した。麻美から返事があると合流し片道2時間の道のりの半分以上を一緒に帰る。帰る際、出来るだけ同じ講義を選択し、先に電車を降りる桜は

「また、明日。帰ったらメールするね」

と先に電車を降り最寄り駅からさほど遠くないので、『S』バンドの曲を聴きながら家路を歩く。
相変わらず優しい声で落ち着く。
自宅に帰るなり速攻、選択する講義を考え直しては麻美にメールし決めていく。そんな事をやってるうちにあっという間に日付が変わってしまい麻美と何時の電車に乗るかを決め就寝する。
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