妖あやし、恋は難し
「ったく湊。さきに京都に入って要人の護衛してろって言ったけど、揉め事を起こせとは言ってない」
「…俺は規定通りやった。問題ない」
「その極悪人顔が一番の問題なんだ。俺を見習ってにっこり笑え、じゃなくても眉間の皺はどうにかしろ」
「……外面だけの腹黒男の方がよっぽどたちが悪いと思うがな」
「…それって俺の事?」
工藤と湊は確かに顔見知りのように親密に話す。
その様子を傍で見ていた警官二人は自分たちがどんな相手を逮捕しようとしていたかと察し、青白くなってた顔をさらに青くさせて冷や汗をだらだらと流した。
そんな二人に向かい、工藤は外面だけと揶揄されるご自慢の笑みを浮かべ、言う。
「それはそうとして、コイツの逮捕の件だが、俺の指示で今回の巽組の一件の要人を護衛している最中だった。拳銃の携帯許可も出していることだし、どうか大目に見てくれないかな。あ、壊したトイレのドアの修理費はこっちがもつからさ」
「は、はいっ!勿論でございます!!!」
「ん。すまないな、これからもよろしく頼むよ」
「「ハイッ!!、失礼しますッ!!!」」
慌てた様にそう言うと警官たちはそそくさとその場を去っていく。
小さくなって人ごみに紛れていく彼らの後ろ姿を見送ると、工藤はそれまでの笑みを崩し、がくりと力を抜いてそれはそれは大きくため息を付いた。