妖あやし、恋は難し




「ったく…!湊!!日本で銃は使うなって!!何度言えば分かるんだ!!」


「言ってたか?」


「湊!!!」




警官たちが居なくなった途端、これである。


その様子を見ればわかるように、もちろん湊は工藤の部下などではない。


工藤がとっさについた嘘。


正確には、湊が日本警察の協力者であることに違いはないが、拳銃の携帯許可は持っていない。


にも関わらず、湊に工藤の忠告を聞き入れる気はさらさら無いようで。


工藤は頭を悩ますばかりだ。





人が少ない場所へ移ろうと、使われていない小さな会議室に移動した工藤と湊の二人。


彼らが出会ったのは数年前、アメリカでだった。


過去には色々とあったが、今は刑事とガードマン、形は違えど、誰かを守るために働く者として、必要な時互いに協力し合う関係に落ち着いている。


刑事のそれも高い地位を持つ工藤は広い情報網と力を持っているが、法に縛られ自由に身動きは取れない。


一方湊は、この日本で平気で拳銃を持ち歩く犯罪者紛いのガードマン。法などに囚われることを知らない自由人であり、逆に言えば法を犯しても捕らわれない、証拠を残さないよう訓練を施された人間。


ゆえに


工藤は自分の手が行き届かない凶悪事件や厄介な問題を湊に手助けしてもらい、その見返りとして湊は工藤から法が許す限りの警察の協力を情報という形で得る。


まさにwin-winの関係だが、その中でも決め事が一つあった、


それは


『人は殺さない、犯罪は擁護しない』


見境なく発砲をする湊に対して作った唯一の決め事。


人を殺すことも、重大な犯罪を起こした際にその罪を裏から手を回して隠すこともしない。


証拠が出れば徹底して刑事として湊を追い詰めるというものだ。




工藤が湊を、巽組の一件でこの慌ただしい警察本部に呼んだのは、その唯一の決め事に関することでだった。




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