妖あやし、恋は難し



「一体何のようだ工藤。俺は忙しい」


「ああ、そうだろうな。巽組の件、現場を見なくてもお前の仕業だってことは分かる」


「だったらなぜここへ呼ぶ。死人でも出たか?取り決めは守ったはずだが」


「死人はいない。相変わらず見事な手際だよ…三年前と一緒で。けど、今回は慎重さが少しかけたみたいだな」



これを見てみろ。





そう言って工藤が差し出したのは、スマホ。


そこに映るのはどこかの監視カメラの映像のようだった。


眉間にシワを刻んだまま、湊が凝視する先に、三人の人影が小さく映る。


湊の目の色が変わる。


それは巽組から急いで立ち去る、湊、結、蓮の三人の姿だったからである。




「これは…どこの映像だ」


「…巽組から三百メートルほど離れた場所に止めてある車のカメラがとらえたものだ。時間的にも場所的にも、巽組から急いで逃げてるとしか思えないな、これじゃあ」


「…チッ!」



悔しそうに歯噛みをする湊。


無理もない。


彼ほどの人間がこんなミスをしでかすなど、今までではありえなかったのだから。




「…一体どうしたんだ。お前らしくもない。いつもだったらこの位すぐに気が付くだろう」


「……ああ」


「ファミレスでもそうだが、お前が護衛中に警察沙汰になるような目立つ事件起こすこと自体おかしい。…何かあったのか?……もしかして、そこに映ってる女の子が原因か」


「ッ…!!!?な、何の話だッッ!!?どうしてそうなるッッ」




(…図星かよ……)


お茶を飲んでいたら噴き出しそうな勢いで動揺を示す湊。


珍しいその様子に、工藤は驚きを隠せない。


昔から皇湊という男を知っているからこそ、怒り以外の感情をほとんど外に出さないこの堅物短気野郎が、

絵に描いたような動揺を見せる日が来るなんて、思ってもみなかったからである。



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