妖あやし、恋は難し
(どどどどどーしてここにっ!?)
相変わらず顔が恐い!!
怯える結に、湊は詰め寄る。
「お前、どうしてここに居る。やっぱり泥棒か何かか」
「ちっ違いますッ!わたしはただ…このお屋敷に異常がないか、見て回ってただけで…」
「…異常がないかだと?ハッ、インチキ野郎のクソガキが、下手に出てりゃ調子のいいこと言いやがって」
(全然、ぜんっぜん下手に出てないッ! バカなの?この人バカなの!?)
心の中でツッコミを入れはするが、表面上はそう強気になれない。
こんな怖い顔でメンチ切られて縮み上がらないわけないじゃないか。
湊はさらに結に詰め寄る。
壁際に追い込み、両手を壁について逃げ道をふさぐ。
世の若者たちは『壁ドン』と言ってキャーキャーと頬を桃色に染めて騒ぐだろうが、いかんせん結にとっては恐怖でしかない。
「一つだけ言っておく」
「!?」
「俺はお前らのような、霊だの妖だの訳の分からないことを言うやつらが、大嫌いだ。ありもしないものをあると言い、見えもしないものを見えるという」
そういう事をやる奴らには反吐が出る。
「例えそれが、お前みたいな女のガキでもな」
とにかく怖かった。
幽霊よりも妖よりも、怖くて怖くて、結は小さく震えあがる。
それでも心のどこかで、結を見る彼の目は、ただ怒りだけでなく、深い恨みや憎しみのようなものが見え隠れしているような気がしていた。