妖あやし、恋は難し
「おい、聞いてるのか」
随分と高いところからメンチを切ってくる湊。
結が158センチに対して湊は180を超える長身だ。
身長差による圧迫感はおのずと出てくる。
(もう…ほんとに嫌なんだけど…)
涙目になりながら、結は湊をきっと見上げた。
途端に、眉間の皺が一層深くなる
「な、なんだよ…」
反対に、口調は少しばかり弱々しくなっていく。戸惑う様に。
だから言えたのだと思う。
結は口をわなわなさせて、思わず叫んだ。
ほとんど、無意識に。
「~~~ッ嫌い!!!」
と。
ピシッと、一瞬で石になったように湊は固まる。
そして
「ッッあ゛あ゛!? なめてんのかテメエェ!!!!」
大声をあげて怒鳴り散らした。
気づいたときには後の祭り。
(ハッ!!? わ、わたし、今ななななんてことをッ!!!!?)
「ごめ、ごめんな…さ…!!」
半泣きでそう言いかけた時。
結は気が付く。
和室で眠っていたはずの老人の姿が無くなっていたことに。
布団やまくら、その全てが、跡形もなく。