妖あやし、恋は難し

苛立ちの原因




(クソックソックソッ…! 何なんだ、何なんだ一体!!!)

皇湊は、この上なくイラついていた。





皇湊がこの屋敷に来て早三か月。

まさかこんな事になるなんて思ってもみなかった。

湊は雇われのガードマンだ。

命を狙われた要人や、今回の柳家のような金持ちに雇われ、主人となった者を命がけで守る。

その世界において、湊はかなり有名だった。

実力はトップクラス。

何人もの人間を危機から守ってきた。

信じるのは己だけ。

そんな彼には嫌いなものが一つだけあった。

それは『霊能力者』を名乗る者達
例えば、そう、【陰陽師】とか。

(だーーー!!くっそ!思い出しただけで虫唾が走る!!!)

この家の主人、柳洸太郎の寝室前で、湊は今日の出来事を思い出して暴れていた。
暴れていたと言っても脳内で、である。

仏頂面がデフォルトの湊は、感情をほとんど表に出さない。唯一出すのは怒りぐらいだ。
だから常に怒っているように思われる。

仕事上は良い。

そうあることで、大抵のチンピラは警戒し手を出しもしないのだから、怖い顔も悪くない。

だが今回ばかりは湊のイライラも我慢の限界のようだ。

本人は表情に出してないつもりだろうが、全身から、顔面から泉のごとく苛立ちが溢れ出て溢れ出て、他の雇われガードマンは真っ青な顔で引いている。

仁王立ちし後ろに腕を組んで、見た目はまじめに職務をこなしているように見えるが、さっきから貧乏ゆすりが止まらず、いつか地響きがしてきそうなほどの酷さだ。

その姿はさながら鬼神のようだった。

< 17 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop