妖あやし、恋は難し
後日談
◇
柳邸主人、洸太郎の父が悪霊になってしまった理由は
のちに洸太郎本人の口から語られた。
彼は昔から厳格な人だったという。
一代で今の地位を築き上げた父。
他人に厳しく、ことさら自分の子供には厳しかった。
周りの人間を信用せずひたすら人を避け、いつだって彼は一人で生きていた。
それは家族間においても変わらない。
彼は和室にこもり息子も娘も、妻さえも寄せ付けなかった。
年を取り、死の間際になっても。
ある日彼はひっそりと、たった一人でこの世を去った。
妻も子供も誰も、誰一人彼を看取らなかった。
それが望みだと思ったのだ。
いつだって一人で生きてきた彼の最後の望みだと。
だが彼は、本当は寂しかった。
それまでの人生を間違っていたとは思わない。
ただ、死ぬ間際になって自分の手を取ってくれる人すらいないのかと
『ああ、さびしい…』
『一人ぼっちは、さびしい…』
『さびしい…』
『さび…しぃ……』
それが彼の最後に思った事。
その思いが彼を、彼の魂を、現世に引き留めていたのだった。
柳邸主人、洸太郎の父が悪霊になってしまった理由は
のちに洸太郎本人の口から語られた。
彼は昔から厳格な人だったという。
一代で今の地位を築き上げた父。
他人に厳しく、ことさら自分の子供には厳しかった。
周りの人間を信用せずひたすら人を避け、いつだって彼は一人で生きていた。
それは家族間においても変わらない。
彼は和室にこもり息子も娘も、妻さえも寄せ付けなかった。
年を取り、死の間際になっても。
ある日彼はひっそりと、たった一人でこの世を去った。
妻も子供も誰も、誰一人彼を看取らなかった。
それが望みだと思ったのだ。
いつだって一人で生きてきた彼の最後の望みだと。
だが彼は、本当は寂しかった。
それまでの人生を間違っていたとは思わない。
ただ、死ぬ間際になって自分の手を取ってくれる人すらいないのかと
『ああ、さびしい…』
『一人ぼっちは、さびしい…』
『さびしい…』
『さび…しぃ……』
それが彼の最後に思った事。
その思いが彼を、彼の魂を、現世に引き留めていたのだった。