妖あやし、恋は難し



【陰陽師】とは

吉凶を占い、邪を祓う者
世にいう安倍晴明を代表とする、霊を相手に行う職業の名称をいう。

幼い頃から結の目には、本来人の目に見えぬものが見えていた。

そして彼らは、人よりも近くに、結の傍らに居たのである。

霊やら妖やら、生きている人間と区別がつかないものから気味の悪いグロテスクな外観のものまで。

彼らが見えることで人間関係には多少なりとも苦労したが、かと言って嫌いになれる訳もなく。

高校三年生となった今では、祈祷や除霊など陰陽道のイロハ全てを教えてくれた師匠である父の跡を継いで、こうやって【陰陽師】として働いている。

どうして陰陽師って言いたくないのかって?

信じる人なんてほとんどいないからである。

そこに妖がいる
あなたに悪霊が憑いている
私は陰陽師だ

本人がいくらそうだと言っても、何の根拠もないオカルトめいたこんな話、誰も信じてくれるわけない。

だって見えないのだから、
何一つその言葉を証明する手だてがないのだから当然。

加えて、今の世の中、ニセ霊能力者のはびこりようったら…

信じれるはずないじゃない。

今回のように稀に神にすがる思いで頼ってくる人たちを助けるのが、結の仕事だが

その他大勢の意見は一貫して一つ。


「陰陽師?は、なんだそれ。本気で言ってんのか?」


そうそう、こんなふうに罵倒され・・・

「…へ、?」

結は目を丸くしてその声の主を見上げた。

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