妖あやし、恋は難し
「結さあ、今日の放課後ひま?」
「え?」
「部活が急に休みになったんだんだよね、カラオケにでも行かない?」
菖は女子バレー部に所属しており、休みなんて滅多にない。
久し振りの休みに自分を誘ってくれるなんて…!!
結は嬉しさのあまり頬を染め、菖に抱き付いた。
「あやめちゃんっ!嬉しい!!」
「な、何がっ?」
「行くっ!」
そういう事で、二人は一緒にカラオケに行くことになった。
菖は次々に曲を入れては歌っていく。
結はあまり曲を知らないので、菖に教えてもらいながら。
小さい頃から友達と遊ぶということをしてこなかった結にとって、その時間はあまりに楽しいものだった。
ジュースを飲み、歌を歌い、二人で笑いあい。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていって。
空が暗くなり始めた頃、二人はカラオケを出て家路についていた。
帰り道
菖が結に話しかけてきた。
「結はさ、進路どうすんの?」
二人はもう高校三年生。
季節はちょうど夏に差し掛かった頃だ。
そろそろ本格的に受験勉強等に取り掛からなければならなくなる時期だろう。
「あ、私は、…実家の稼業と言うか、親の仕事を継ぐから…大学には行かないかな」
「そうなんだ!そっかーいいなあ、じゃあ受験勉強とかしなくていいじゃん!!」
「うん…でも、授業とかテストはできるだけ受けるつもり。先生にそうしなさいって言われた…」
「結は頭いいもんね。テストで好成績出させて学校の評判上げたいんだよ先生たち。まったく、面倒な事考えるよな」
男前な菖は、腕組みし怒った様にそう言った。
結は苦笑い。
自分がもう、親の職業を継いでるなどという事は言えないので、後ろめたさもあってか、それしか返答できなかった。