妖あやし、恋は難し
「いいのよあなたは。悪いのはコッチの強面馬鹿男なんだから!」
「へ?」
「ちょっと湊兄ちゃん!ここ待ち合わせに使うのは別にいいけど、お客様を怖がらせないでっていつも言ってるじゃない!!」
「うっせえな!今回はこのガキが騒いだから止めようと…」
「湊兄ちゃんを怖がって逃げようとしてたのよ!そんな怖い恰好してるから!!どうして学習しないかなあ!」
どうやらこのウエイトレスは、湊の知り合いらしい。
あまりに対等な言葉のやりあいに、驚き目を見開きながら、結は恐る恐る口を開いた。
「い、妹さんなんですか?」
結がそう尋ねると、怒っていたウエイトレスは再びコロッと笑顔に戻り、結に向かって笑って言った。
「え?この人と?あはは!違う違う!従兄なの、兄ちゃんって呼んでるのは小さい頃の癖ね。勘違いさせてごめんねえ」
「あ、い、いいえっ。す、すみません!」
「ふふっここにあなたが来たときから思ってたけど、かわいいわねー!顔立ちもすっごく綺麗だし!まだ高校生なんでしょう?将来もっと美人になるわよー!どう?ここで働かない?」
笑顔が素敵なこのウエイトレス
湊との血の繋がりなんて一切感じられないほど明るい彼女は、皇 蘭(らん)というらしい。
この喫茶店の副店長で、時たまこうやって、お店を湊の待ち合わせ場所として提供しているそうだ。
そのたびに客が逃げていくことが唯一頭を悩ませている事らしい。
とにもかくにも、
(パンケーキは無理そう……)
結は小さな望みが絶たれたことと、もう会う事もないと思っていた人物との再会にがっくりと肩を落としたのだった。
◇
これが彼との二度目の出会い。
【陰陽師】一条結と【依頼人】皇湊としての出会いである。