妖あやし、恋は難し

お姉さん




さて問題です。

いま私はどういう状況でしょう。





隣り合う、泣き虫女子高生陰陽師と強面短気ガードマン
長く続く無言の時間
細かく揺れ動く、狭い密閉空間

そう。

今、私こと一条結は、何故か、宿敵(?)皇湊の運転で、車に乗っていた。





事のあらましを説明しよう。

やはり、湊は依頼をするために、結に手紙を送っていた。

【陰陽師】である一条結に。

前回の出会いが出会いだっただけに、結はそのことが信じられず何度も繰り返し確認したが、結局それがしつこ過ぎてまた怒鳴られる羽目になった。

その後、彼は依頼の内容は一切言わず
「ついてきてほしい場所がある」
とだけ言って、半ば無理やり車に乗せて発車させたのである。



以前、

彼と最後に出会った日。

それは、柳邸での脅迫事件の数日後、洸太郎の父の供養をしに行った日だった。

和室で仏壇に向かって手を合わせていた時。

『独り言の多いガキだな』

彼は背後に立ってそう言った。

『…き、き聞いて、たんですか……』

『別に』

もう帰るんだろ、送る。仕事だからな。

そして最後の最後まで仏頂面のまま、湊は結を睨み付けて、結は半泣きで、最後は目を合わすことなく二人は別れた。



そうだ。

彼は嫌っていたはずなのだ、

結そのものを、

彼女の職業を。

だったらどうしてここに彼がいるのだろう。

(どうして私に、依頼をしたのだろう…)

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