妖あやし、恋は難し

「霊うんぬんはもうどうでもいい。ただ、あんたの人間性は信じてみても、いいかと思った」


湊はタバコをとり、まっすぐに結の目を見つめ、言う。

不思議と彼への恐怖は無くなっていた。


「一条結、あんたに依頼する。ある人を、助けてほしい」





まずは人に会ってくれ。

そう言って湊は病院の中に入っていった。

先を行く湊を見つめ、先ほどの言葉を思い出す。


(助けて…って、私に?)


一体どうしろというのだろう。

ここは病院であって、ここに居る人たちは病人や怪我人だ。

結がどうこう出来る人たちじゃない。

かと言って、あの湊が、あれだけ結を嫌っていた湊が、頼ってくれたのである。

何とかして少しでも手助けしたいではないか。


悶々とそんなことを考えていると、結の悩みを察したのか湊が話しかけてきた。


「おい、お前勘違いしてるみたいだが、病人を助けろと言うわけじゃねえぞ」

「へ?」

「依頼っつうのはな、ある人の目を覚まさせてほしいっていうか…まあ、実際に会ったほうがいいだろう」


そう言って彼が向かったのは、『ICU』と書かれた病室だった。

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