妖あやし、恋は難し
「霊うんぬんはもうどうでもいい。ただ、あんたの人間性は信じてみても、いいかと思った」
湊はタバコをとり、まっすぐに結の目を見つめ、言う。
不思議と彼への恐怖は無くなっていた。
「一条結、あんたに依頼する。ある人を、助けてほしい」
◆
まずは人に会ってくれ。
そう言って湊は病院の中に入っていった。
先を行く湊を見つめ、先ほどの言葉を思い出す。
(助けて…って、私に?)
一体どうしろというのだろう。
ここは病院であって、ここに居る人たちは病人や怪我人だ。
結がどうこう出来る人たちじゃない。
かと言って、あの湊が、あれだけ結を嫌っていた湊が、頼ってくれたのである。
何とかして少しでも手助けしたいではないか。
悶々とそんなことを考えていると、結の悩みを察したのか湊が話しかけてきた。
「おい、お前勘違いしてるみたいだが、病人を助けろと言うわけじゃねえぞ」
「へ?」
「依頼っつうのはな、ある人の目を覚まさせてほしいっていうか…まあ、実際に会ったほうがいいだろう」
そう言って彼が向かったのは、『ICU』と書かれた病室だった。