妖あやし、恋は難し
部屋の窓がカタりと音を立てた。
窓が音を立てながら独りでに開くと、そこから松葉色の風呂敷包みが放られる。
ちなみにここは十五階。外にベランダなど無い。
しかし結はそれに対しけして驚くことはなく、ベッドから降りて風呂敷包みを取り上げた。
窓がまた、ひとりでに閉まりかけるが、
「…閉めなくていいよ、【ハク】」
結が一言そう言うと、窓はぴたりと動きを止めた。
風呂敷の中には結がいつも仕事の際着込む巫女装束とその他着替えなどが入っている。
今回のように突然依頼が来て、仕事に駆り出されるの事は少なくない。
その為つねにあらかたの準備はしておくのである。
中身を確認しながら、結は先ほどの病院でのことを思い返していた。
不治の病の女性
その女性に干渉する占い師
占い師が売りつけた物の数々
(何か…あそこで何かが引っ掛かった。もし、私の感が正しかったら…)
「お姉さんの【病】…治せるのかもしれない…」
結の表情は陰陽師のそれへと変わっていた。