妖あやし、恋は難し
車を走らせ、病院に向かう。
昨日と同じ病室へ行くと、湊が突然立ち止まった。
「ど、どうしたんですか」
「………!!」
問いかけても湊は答えない。
どうしたのかと結が湊の視線を追うと、その先には見たことのない女性が、遥の病室にいるではないか。
(誰だろう…あ、まさか……!!)
結は察する。
そこにいたのは湊が言っていた例の女、占い師【ホオズキ】だった。
「テメエッ!!!」
湊が病室に怒鳴りこむ。
そして女の胸ぐらを掴みあげた。
以前結に向けていた何倍も怖い顔で女占い師を睨みあげる。
しかし女はそれに臆せず、馬鹿にしたように、勝ち誇ったように笑っていた。
「…あら、湊さん。お久しぶりですわね」
「二度とここには来るなと言ったはずだ!!」
「そんな事言ったって、遥さんとは家族も同然ですのよ。命が危ない時に駆けつけないわけないじゃないですか」
「ふざけんな!また姉貴をたぶらかしてガラクタ売りつけに来たんだろ!」
「なんてことを!あれらには全て神聖な力が宿っているのですよ。遥さんの病気を治すには必要なものなんです」
「ハッ!どの口が!!現に今姉貴は死にかけてるじゃねえか!力があるなら救えよ!!未来が見えるならこうなることが分からなかった!!!全部ッ…全部お前がこうしたんだ!!!お前が姉貴を殺そうとしてる!!それが分からないのか!」
彼の言葉の端々から、怒りや恨みや、口惜しさが滲み出ていて。
胸ぐらを掴む手は怒りで震えていた。